大学受験における実験器具の取扱い

6.分離する
【A】 濾過

固体と液体の混合物を分離するのによく用いる。メカニズムは「枝豆を茹でてザルを通すとザルの上に枝豆が残る」ってのと全く同じだ。ザルの代わりに漏斗と濾紙を使うだけ。

濾紙が漏斗に密着するようセットした漏斗を漏斗台にのせ、下に受け器をおいて上から混合液を流し込む。漏斗の下部の管が受け器の壁面につくようにする。

余計な結晶を出さないようにするため保温しながら濾過することもある。
この場合は「保温漏斗」という中に水を入れて加熱可能な漏斗のカバーのようなものの上に漏斗をのせて用いる。

濾過するのに時間がかかりすぎる、濾過するとき時間を掛けたくない・・・まあ、析出した結晶を回収するのだけが目的で溶媒の方はどうでも良いなんてケースに多いが、そういうときは「吸引濾過」という手口を使う。

磁器の吸引漏斗(ヌッチェ、ブフナー漏斗ともいう)をゴム栓で吸引瓶に接続し、吸引瓶を耐圧ゴム管でアスピレーター(水流ポンプ)、やその他のポンプにつないで排気、吸引瓶内を低圧にして強引に濾過しちゃうのだ。普通の漏斗を使うときと違うのは、漏斗をヌッチェの底面(平らな円形でぼつぼつと細かい穴があいている)にピッタリはまるように円形に切り抜いて、まず始めに濾紙を液の一部で完全にしめらせてから使うこと。濾紙がピッタリ底面に張り付かないと、空気が下に漏れてしまい液を入れたときに下から引いてくれないからね。
【B】 蒸留

液体同士の混合物を沸点の違いを利用して分離するのに用いる。

最も多く用いられるのは次の方法

枝付きフラスコを用いて液体を加熱し、枝部から出た気体をリービッヒ冷却器に通して液化し、受け器で受ける。

目的温度の蒸気を留出させる必要があるので、「最低でもこの温度にはなってる」という温度をはからなくてはならない。そのため、温度計は枝付きフラスコの枝分かれ部分の高さに設置する。
【C】 分液ろうとを用いての分離

ひとつの溶媒に二種以上の溶質が解けている時、溶質の溶解性が違い、かつ、初めの溶媒と溶け合わないもう一つの溶媒を加え、振り混ぜることによって溶質の一部を新しく入れた溶媒に移行させることによって溶質を分離する方法。

分液漏斗に溶液を入れておき、もう一つの溶媒を投入し、その後栓をしてよく振り混ぜ、静置し、完全に二層に別れたところで、下層は下の活栓を開いて出し、上層は上の栓部から出す。

振り混ぜるとき、ときどき活栓を上向けにして止め、活栓を開いてガス抜きしないといけない。これは内圧が上がってしまい、容器が破損したりする危険があるからだ。
特に沸点の低い揮発性の溶液を使う場合要注意!
【D】 電気泳動

いやあ、物質って泳ぐんですねえ・・・・冗談じゃあないですよ。

ゲル(ま、要するに寒天やゼリーみたいなプルプルの半固体状態)上の一点に試料をのせ(・・・ってよりしみこませたり載せたり・・・)ゲルの両端に電極をつなぎ電圧を掛けると・・・電気的性質によって複数の試料が違った速度で動き出すからアラ不思議。

もっぱらこれで分離なぞを行うのは、試料が微量である時が多いので基本的には定性分析の時だけと思っていればよい(アイソトープで標識した試料ならそのまま線量測定で定量ということも可能には可能だが)が、たまに回収ということもある。その場合、分離した物質の回収にはゲルを電極からの距離ごとに切ってすくって溶解しているモノをまた液体に戻してということになる。切ってすくってってあたり、意外に原始的なんですねえ・・・。
【E】 クロマトグラフィー

実は電気掛けなくても、物質って結構溶媒によって泳ぐものも多いのです。
何か液体を引っかけたあとの衣類の輪ジミなんてのはそのせい。(端っこのほうが濃かったりするでしょ。)

それを利用してモノを分離しちゃおうってのがクロマトグラフィーです。
溶媒と溶質によって「溶質移動距離/溶媒移動距離」というのが固有の値として決まっておりますんで、それを利用するんです。

試料が微量なときによく使います。
実際上は定量にも定性にも物質の分析には非常によく使う方法です。(だって便利なんだモン。)

濾紙を使うペーパークロマトグラフィー、シリカゲルを薄く貼り付けたガラス板を使う薄層クロマトグラフィー、特殊な性質の樹脂を使うカラムクロマトグラィー、ガスを使うガスクロマトグラフィーなど多数方法がありますし、操作法もいろいろです。
ただ、個々の方法については知っておく必要はありません。

ただ、実は化学の試験では殆どと言っていいほど出てこないんです。

ただ、生物あたりでぽっと用語が出ちゃったりしかねないので概観だけ押させておく方が無難だと思います。
【F】 電気分解

中学校の時やったホフマンの電解装置。あれ以外には考えなくてもOK。