小説6話 危うい平和

リバイダー・シュナイン 元軍人。政府に不満を持ち反旗を揚げる。

アーゲフ・クロイツ 反乱軍の副司令官的存在。後にシュナインとの手を切る。

クロイツ「なぁ、シュナインのおっちゃんよぉ・・・」
そういうと1人のまだ30過ぎほどの成人が答えた。
シュナイン「なんだ。まだ飯じゃないぞ」
そういうシュナインにクロイツは
クロイツ「そんなん聞いてんじゃねぇよ。一体、この暴動が何の意味があるんだ?」
はっきりとクロイツは言った。
クロイツの言ったことにシュナインは怒りはしなかった。逆にガムを1つ投げ渡して
シュナイン「ずっとこんな平和が続かないだけだ。落ち着いて考えろよ。こんな平和主義がずっと続いてくれるならありがたいだろうけど・・・なぁ。この平和主義に一体幾千の・・・・いや、幾万というべきかな。幾万の人間が死んだと思っている。それから見れば、やはり完全平和主義など通用しない。武器で脅す時代から、武器を捨てる時代になっても、犠牲者は救われない。
お前の言うことは大体分かる。だけどだ、冷静に考えてみれば、おかしいって薄っすらとわかるだろ?」
そういう風にはなすシュナインにクロイツはこう言った。
クロイツ「おっちゃんの言うことは大抵正しいけどさ。なにも平和主義が持続しないってことはないんじゃねぇのか。だって、俺達がやったことが正しいなら、元から完全平和主義なんかねぇぜ、おっちゃん。」
シュナイン「それは違う。」
はっきりとシュナインはこういった。
焚き火に薪をくべる。
シュナイン「根のないところに葉は生えないんだ。完全平和主義があるから俺たちは暴動を起こした。俺たちがやらなくても、きっと誰かがやっただろう」
少し悲しげに言うシュナインに、
クロイツ「なに悲しげな顔してるんだよ、んなことやってたらこの暴動は成功しないぞ。」
それを聞くとシュナインは、薪を拾ってくるのでちょっと待っててくれといって、森の中に入っていった。
シュナイン(俺が思うことは間違いかもしれない。そもそもあの黒髪の男・・・いやあれは女か?どっちにしても、あのカザロフと名乗る物は、なぜ私にサーペンドを託したんだろうか。)

場所は変わってここは統一国家政府の代表会議室。
メイリス「今すぐ武器を持ち、クーデターを起させないためにも、暴動の徒を捕まえるのです!そうしなければこんな事態は防げませんよ!」
ゴルダゥ「少し落ち着きましょう。(落ち着いていられるかは定かじゃないがな・・)とりあえず、あの暴徒をなんらかの形で倒さなければならないのは事実。
そこから糸口を探っていけばいいんですよ。」
しかしそう冷静に答えるゴルダゥにも、焦りがある。合点が行かない。なぜ今ごろ・・・
スグータフ「メイリス議員よ、これだけは言っておく。私達は・・・・完全平和主義の名において、武力行使を一切しない」
その言葉に、メイリスは愕然とした。スパイとしての愕然ではなく、政治家として愕然とした・・ということだ。
なぜ武力で相手が攻撃してくるのに反撃しないんだ?この財政ならモビルスーツなんか造作も無く作れるではないか。
そう思うと、メイリスはこういった。
メイリス「いいでしょう。ですが私はこの政府を去らねばなりませんな!」
いきなり立ち上がるとメイリスはさらに
メイリス「このようなふがいない政府を私は知らない。自分の主義を通しても、それに見合う力が無ければ、戦えないんですよ、大統領」
しかしスグータフは首を横に振った。
スグータフ「出て行くなら出て行ってもかまわない。だが、完全平和主義は幻想ではない。民の・・平和への誓いは、どんな兵器にも勝る力と私は確信している」
メイリス「奇麗事をぬかすな!大統領よ!」
そのメイリスの目には激怒した様子がありありと見て取れた。
何故だ。何故こいつは戦おうとしないんだ。奇麗事で解決するなら、一体武器というものは何のために生まれたのか。
そう思っているメイリスにスグータフは忠告した。
スグータフ「貴様の思っていることは大体分かる。武器はなんのためにうまれたのか?であろう。
答えを教えてあげようか。答えは・・・」
その言葉を聞いた瞬間、メイリスは逃げるようにしてドアを開けて出て行った。
メイリス「なにが・・・・なにが・・!」
スグータフがいった言葉、それは・・・
”弱者が弱者であることをごまかすためだ”
政治家として、民を救うために戦うとしてもだ・・・。こんな偽りなぞ、いらない。
すぐに宇宙との通信を取る。
メイリス「ライザ閣下、暴動に対し地球圏統一国家は、武力行使をしないそうです」
ライザ「ふむ・・・予想通りだ。」
メイリス「ですが、なぜわざわざ武力行使をしないのでしょうか・・」
ため息をつき、ライザはこう言った。
ライザ「人の信念を、お前は理解してない。」
一言そういわれ、メイリスは困惑した。
ライザ「お前には分かってない。全てを貫き通す力がどんなに強いか。完全にそれを遂行するという信念は、どんなモビルスーツにでも勝てる。」
メイリス「・・・・ともかく、宇宙へあがります。」
通信は切れた。


一方ヒイロ達は、暴動の様子をテレビで確認した。
ヒイロ「・・・・・」
リリーナ「私、とめてきます。」
そういうとリリーナは飛び出そうとした。しかし
ヒイロ「待て」
そういうと、リリーナの手を取り、
ヒイロ「俺も行く」
そういって、リリーナと一緒にヒイロは自動車を動かし、反乱者の集う場所へ向かう。
リリーナ「ねぇ、私は完全平和主義を貫きとおせるかしらね?」
自信なさげに言った一言に、ヒイロは
ヒイロ「お前に貫き通す気があるならな」
という。しかしリリーナは心なしか自信がなさげである。
ヒイロ「お前が後ろを向くなら、車も後ろに向けようか」
そういうとヒイロはバックした。その瞬間
リリーナ「やめて!行くと決めたからには絶対行くわ!」
多少怒ったように言ったリリーナにヒイロは
ヒイロ「そうだ、それでいい」
といった。
と、そのときである。バックさせて止まっていたヒイロの自動車に、1台の車がやってきた。
五飛「貴様も・・か」
ヒイロ「五飛、お前もくると分かっていた」
あっさりとヒイロは受け流したが、五飛は
五飛「貴様につられて来たのではない!」
と言って車を走らせた。
サリィ「リリーナお嬢様もいらっしゃるのね〜!」
リリーナ「お嬢様は止めてください!」
ヒイロは車を走らせ後に続く。
五飛「おい、ヒイロ」
ヒイロ「なんだ」
五飛「ここで止めなかったら意味無いからな、覚悟しておけ」
ヒイロ「ああ、わかってる」
サリィ「そんなことよりも、そろそろ到着するわよ」
リリーナ「あれが・・」
ヒイロ「車をとめて交渉しないとな・・・」
そういうと、車を止めて、森の中を走り出した。
たどり着くとそこには森が広がっていた・・・。
シュナイン「お前の連れがきたぞ」
デュオ「おい!ヒイロ、お前も来たのか!」
五飛「俺もついでにいるぞ。」
ヒイロ「いち早く先にお前がここについていたとはな・・・」
その様子にクロイツとシュナインは顔を見合わせた。
シュナイン「どういうわけだ?3人できた訳ではなさそうだな」
ヒルデ「いやね、もうすでに2人ずつきてるんだから6人でしょ」
デュオ「こんな戦いやめちまえって思ってるのは俺だけじゃないってことさ。」
ヒイロ「お前は誰だ」
シュナイン「俺の名前はリバイダー・シュナイン。おっと、お前らの名前は聞かなくても分かる。」
当然である。ヒイロたちはガンダムのパイロットとして軍人の中では今でも有名なのだ。
クロイツ「ちなみに俺の名前はアーゲフ・クロイツ。クロイツでいいぜ。」
五飛「貴様らはこの戦いに何の意味をもっている?」
いきなり唐突に聞く五飛に、シュナインは
シュナイン「完全平和主義が空想であるかを試すためにだ」

後書き
まだ戦闘はしないんだよな・・・。ガンダムWってなんて奥深いんだろ(帰れ)。

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