大学受験における実験器具の取扱い

4.加熱する
【A】 熱源

アルコールランプとガスバーナー(テクリュバーナー)の二つしかない。
 (ガスバーナーには他にブンゼンバーナーもあるが、テクリュバーナーは実はブンゼンバーナーの改良型であり、もう既にブンゼンバーナーは余り見かけなくなっている。 他の加熱器具として、電気ヒーター、電気炉なんかもあるが、使い方がメーカーによりけりなので入試問題にはならない。)

さて、どういう熱源を使うかであるが、実はどっちでもいいってのが殆どだ。
ただ、長時間加熱するとなると、燃料補給のいらないガスバーナーに軍配が上がる。

それと、上限の温度の問題だ。アルコールランプで出せるのはせいぜい500〜600度までなので、それ以上の高温を必要とするもの・・・ガラス細工、るつぼを使っての溶融などはテクリュバーナーを使うしかない。

特殊なものとして炎色反応・・・これはガスバーナーだ。
(アルコールランプでは炎の色がはっきりしないので酸化炎と還元炎の区別が付きづらいので、ガスバーナーのほうが便利なのだ。)
【B】 反応容器と熱源の配置

熱は上に向かうので、熱源を下、加熱するものの入った容器(反応容器)を上にするのはまあ当然。

【直火加熱】
試験管
  1. 固体加熱時   スタンドを立て、クランプで試験管の口が若干下向きになるよう固定する(試験管内の最高温度が物質の位置になるようにするため)
  2. 液体加熱時   試験管ばさみで持つか、スタンドを立てて底が下になるように固定し、底を加熱するが、(液体上部だけ沸騰したりしないようにするため)また口部が熱くならないように必ず斜めにすること。口は必ず人のいない方向に向けること。

ビーカー
  1. 三脚かスタンドにつけたリング上に石綿付き金網をのせ、その上にのせて加熱。

フラスコ
  1. スタンドにつけたリング上に石綿付き金網をのせ、その上にのせ、クランプで首部を必ず固定してから加熱。
蒸発皿
  1. ビーカーに同じ。

【間接加熱】

加熱はしたいが直火で加熱することが適さないという場合もある。
・おだやかに加熱したいとき(間接的に加熱すれば熱が伝わるまでのタイムラグが生じるからね)
・一定温度に保ちたいとき(直火より温度をコントロールしやすい)
・容器が破損して内容物がもし炎の上にかかった場合に危険であるとき。(引火性の問題)
こういう場合は間接的に加熱する事が望ましい。

反応容器が試験管程度で湯煎可能なら、ビーカーにお湯を張ってそれに浸せばいいが、もう少し大きな容器となると、そうはいかない。

というわけで登場するのが「水浴(湯浴)」「油浴」である。
実験用の半球状の穴あきふた(フラスコの首の出口がついているのだ。)付き鍋に油なり水なりを入れて、それに反応容器をどっぷりつけて温めるのだ。

水だろうが油だろうが、容器内の液面が鍋の方の液面ちょうどくらいかそれよりちょっと下にはなるようにするのだが、水を使うか油を使うかはケースバイケース。

使い分けは概ね次の通り。
【水浴(湯浴)】
100°C程度までの加熱で、おだやかに加熱したいときや、一定温度に保ちたいとき。

【油浴】
100°Cを超えて、200°C程度までの温度で間接加熱したいとき
 (当然加熱温度で液体の物質に限られますな。)
万一容器が割れて内容物が水に触れたときに危険が高い物質を加熱するとき。
(ただ、これは特殊なので入試にはそうは出ないだろうが・・・・・)

それと、高温の油に水が入ったら危険であるので油浴では基本的に「水溶液」は加熱しない。(天ぷら揚げてて水滴が落っこちると油がはねて危険だよね、容器が万一破損したとき、その状態になっちゃこまるからね)
砂浴なんてのもあるが、これはさらに特殊なので気にしなくていい。
ちなみに、間接加熱するときは不安定になりやすいビーカーは殆ど使わない。(ビーカーって固定しづらいのだ)
【C】 液体の加熱特有の注意

とにかく突沸がこわい。

液体を加熱するとき、静かに加熱していると沸点に達しても、ちょっとの間沸騰しないで(ボコボコいわないってこと)静かなままの状態でいる事がある。で、その後振動などの刺激で「突沸」という現象が起こることがあるのだ。

「突沸」とはいきなり液体全体が沸騰を起こして、発生した蒸気の圧力で内容物が吹き飛んでしまうような強烈な沸騰のことをいう。

試験管で液体を加熱して突沸が起こると、内容物がへーきで2〜3メートル飛んでいく。とんで行った先に人でもいようものなら即やけどなどの人身事故が起こるわけ。
口が狭く液が飛び去りにくいフラスコ内で起これば急な内圧の上昇で容器破損、あげくガラスが飛び散るなんてこともある。とにかくかなり危険なのである。
(二つとも現場見たことあるけど、ありゃ結構こわかったねえ・・・)

というわけで、液体加熱時には必ず「突沸」の予防策を講じる必要がある。

沸騰石と呼ばれる素焼きのかけらや沸騰管(これはガラス管を練って細工して作る)など、多孔質のものをあらかじめ液中に突っ込んでおく。そうすると、加熱するにつれ、そいつから空気が膨張して漏れだし、水蒸気を気体にする呼び水(・・・・っても実際は気泡なんだけど)の役割を果たしてくれるのだ。

というわけで、沸点に近い領域まで加熱する場合、必ず「沸騰石」「沸騰管」を入れておく必要があるのだ。但し、蒸発皿での蒸発では必要がない。(なんでも・・・液体量に比して液面の表面積がでかいので突沸しないとか・・・ほんとかあ???)
【D】固体の溶融

反応物を磁器の「るつぼ」に入れてふたをし、「炉」に入れてバーナーで加熱する。
はい、これだけです。

細かい温度測定などができないので、この部分は複雑な問題にはなりにくいはず。
【E】気体の加熱

実験装置を組ませる問題としては出ません!と断言しちゃう。